投稿日:2025年01月【コラム】
食品や精密機器の製造、医薬品の開発、研究施設などで利用されるクリーンルームは、特殊な環境で、微粒子や汚染物質を徹底的に排除することが求められます。
クリーンルームの適切な環境を維持するためには、温度や湿度の管理が不可欠です。特に湿度管理は、静電気の発生防止や製品の品質維持、作業環境の最適化に大きな影響を与えます。
今回の記事では、クリーンルームにおける湿度管理の重要性と、効果的な調整方法について解説します。
湿度管理の基本から最新の調整技術まで紹介していますので、クリーンルームの湿度管理について知りたい方はぜひ最後までご覧ください。
クリーンルームにおける湿度管理は、製品の品質を維持するために重要です。湿度が適切に管理されていない場合、静電気の発生や材料の変質など、さまざまな問題が発生する可能性があります。
湿度が低い環境では静電気が発生しやすくなり、静電気は電子機器の誤作動や故障を引き起こす原因となります。半導体や医薬品の製造においては、湿度の変動が材料の性質や製品の品質に直接影響を与えることもあります。
さらに、湿度が適切に管理されていると、作業者の快適性が向上し、作業効率や精度が高まります。湿度が高すぎると不快感を与え、低すぎると乾燥により健康に影響を及ぼすことがあります。
これらの理由から、クリーンルームでは湿度管理が欠かせません。湿度を一定の範囲内(一般的には40~60%)に維持することで、作業環境を最適化し、高品質な製品の製造を可能にします。
クリーンルームの湿度管理は、精密な環境制御が求められることから、適切なシステムの導入が欠かせません。製造工程の安定性や品質管理のためには、一年を通じて湿度を一定に保てる空調システムが必要です。
一般的に普及しているクリーンルームの空調システムには課題が存在します。特に注目すべきはエネルギーの消費量の多さです。外気を取り入れる際には、加熱・加湿プロセスや除湿後の再加熱などが必要となり、大量の熱エネルギーを消費します。特に蒸気を使用する場合、ボイラーの効率が低いため、全体的なエネルギー効率が低下する問題が指摘されています。
さらに、クリーンルームの空調は24時間稼働するのが一般的であることから、長時間の運転がエネルギー負荷をさらに増加させています。
また、冬季の加温・加湿や夏季の冷却後の再加熱に蒸気を利用することで、熱源効率が0.5〜0.7程度と低くなり、コスト面やCO2排出量の増加にもつながっています。このような課題を解決するためには、従来の空調システムを超えた効率的な方法を導入することが求められます。
リキッドデシカント方式は、従来の空調システムと比べてエネルギー効率を大幅に向上させる革新的な技術です。この方式の利点の一つは、ヒートポンプチラーや50℃以下の低温排温水を活用できる点にあります。
蒸気の代わりにそれらの低コストな熱源を利用することで、熱源効率は従来の蒸気システムの4~7倍に達します。
また、大容量の加湿が可能であり、外気処理に最適なこの方式は、従来の蒸気式や気化式加湿器に比べて、効率的で柔軟な温湿度の制御を実現します。試算事例のひとつではその結果、CO2排出量を最大36%、運転コストを最大45%削減という結果となりでき、カーボンニュートラルの目標達成にも大きく貢献します。
さらに、リキッドデシカント方式は、既存の空調システムを全面的に入れ替える「入替方式」と、既存システムに追加する「付加方式」のどちらでも導入可能で、スペースや予算に応じて柔軟に対応できます。
導入を検討する際には、クリーンルームの規模や使用環境を考慮して最適な方法を選ぶのが重要です。
弊社、ダイナエアー株式会社が提供している「リキッドデシカント空調機」は、クリーンルームにおける湿度管理の課題を解決できる空調システムで、多彩なモデルを展開しています。
大風量を必要とする用途に対応する汎用性の高いエアハンドリングユニットです。風量5000㎥/hから対応可能で、10,000㎥/h以上の大風量の処理もできるため、カスタマイズ性に優れています。モジュール単体での導入も可能で、以下の2種類の装置があり、用途や条件に応じて選定が可能です。
①LDM: 世界初の技術として調湿液にイオン液体を採用。調湿液、冷温水、空気の熱交換を同時に行う三流体熱交換器を搭載した高性能タイプ。
②LDU: 熱交換器を分離し、能力を若干抑えることで小型化・低価格化を実現したタイプ。
パッケージタイプ
風量3000㎥/h~9000㎥/hの範囲でパッケージ化されたモデルで、「除湿」「送風」「加湿」の各運転モードに対応しています。処理機と再生機の2ユニット構成で、幅広い施設や工場で外気処理や湿度管理の用途に利用されています。多様な環境に適応する設計が特徴です。
風量200~400㎥/hに対応する小型モデルは、住宅、歯科医院、クリニック、商業施設内の店舗、施設園芸など、大風量を必要としない建物に最適です。コンパクトながらも優れた性能で、小規模な環境の湿度管理を効率的にサポートします。
風量3000〜9000㎥/hに対応し、除湿と加湿の両方をこなすモデルです。処理機と再生機の2ユニット構成で、幅広い施設や工場の外気処理や湿度管理に利用されています。熱源内蔵型、冷温水受給型、温水受給型など、多様な熱源から選択できます。
熱源内蔵型で処理機と再生機を一体化したコンパクトモデルです。風量1500㎥/hまで対応し、設置が容易で、個人宅の外気処理や工場のスポット空調に最適です。
暖房と加湿に特化したモデルで、風量9000㎥/hをカバーします。1ユニット構成で、冬季の外気処理や大容量加湿装置として利用されます。
中部電力との共同開発により誕生した、世界初のイオン液体を活用した三流体熱交換器を搭載したモデルです。調湿液、冷温水、空気の熱交換をモジュール化し、エアハンドリングユニット(AHU)への柔軟な組み込みが可能です。
クリーンルームの湿度管理は、製品の品質維持や安全性確保、そして作業環境の快適性向上のために欠かせない要素です。不適切な湿度管理だと静電気の発生や製品の劣化など、多くの問題を引き起こす可能性があるため、適切な湿度制御が求められます。
一般的な空調システムでは、高いエネルギー消費や効率の低い蒸気利用が課題となる一方で、リキッドデシカント方式は高いエネルギー効率と柔軟な湿度制御能力があります。
そのため、CO2排出量の削減や運転コストの削減に加え、クリーンルームに求められる厳密な湿度管理を実現できます。
湿度管理に課題を抱える施設や、新たな空調システム導入を検討している場合には、リキッドデシカント空調機のような最新の湿度制御ソリューションを導入してみてはいかがでしょうか。
ご興味がございましたらお気軽にお問い合わせください。